金属製屋根を選んで後悔しないコツ

近年、頻繁に発生する大地震。日本はどこに住んでいても、そのリスクがある地震大国です。事実、世界中で起こるマグニチュード6.0以上の地震で見れば、日本だけで20%も占めているのです。地球儀で見ればホントに小さな島国で全世界の20%を占めると言うのは異常なほど多いと言わざるを得ません。昔から大地震は有りましたが、最近はほぼ毎年のように起きているように感じているのは私だけではないと思います。

2024年元日に起きた能登半島地震は最も記憶に新しい災害ですが、住宅の被災状況を見ると阪神淡路大震災の時と類似していると思います。いわゆる「頭でっかち」な造りで1階部分が押し潰され倒壊というパターンです。この場合、屋根材には瓦が使われているケースが殆どで、1階の外壁面には開口部が多く設けられ、耐震壁が少ないというのが特徴的かと考えます。阪神淡路大震災以降、この教訓を活かして「新築」の場合は耐力壁をバランス良く配置し、壁量計算もしっかり取る方向に変わってきましたが、既存住宅全体までには活かされていない事が今回の地震で改めて痛感させられました。

さて、前置きの話と金属製屋根の関係性ですが、これはとても重要な事として捉えて戴きたいと思います。地震で倒壊した家屋の屋根材は瓦と言いましたが、日本瓦の場合で1㎡当たりの重量は60kgになります。仮に間口8.19M×奥行8.19M=67.07㎡の総2階建て(延床面積約40坪)の家の屋根(4寸勾配)を瓦で葺いたとしましょう。屋根には軒の出も有るので、それぞれの出寸法を60cmとすると面積は8.79M×8.79M=77.26㎡になります。これに屋根の勾配係数1.077を掛けます。すると屋根の面積は83.21㎡になります。これに瓦の重量を掛けると83.21㎡×60kgで4,992.6kg、つまりおよそ5tの重量物が屋根の上に常時載っていることになります。例えて言うなら大人の像が一頭屋根の上に居座っているようなものなのです。

これに対してガルバリウム鋼板を始めとする金属製屋根の重量は1㎡当たり僅か6kgで、何と瓦屋根の1/10の重量しかないのです。この圧倒的な軽さは「頭でっかち」で重心がアンバランスな建物を飛躍的に重心バランスが向上された建物へと変え、地震が起きた際の被害を軽減してくれるのです。ガルバリウム鋼板が出てくる以前の金属製屋根はトタン屋根と呼ばれ、関西の方では「小屋の屋根材」と揶揄されてきました。ところが阪神淡路大震災以降は建物の軽量化が叫ばれ、雪の降らない地域でも金属製屋根が多く使われるようになった訳です。

私が住む秋田県横手市は豪雪地帯ですので、昔から屋根材は金属製一択でした。ただトタン屋根の時代と比較するとガルバリウム鋼板製の屋根の方が綺麗でデザイン性も良く、耐久性も高くなってきたと感じています。屋根の勾配や家の外観デザインで葺き方は変わりますが、基本的な部分は変わらないと思います。この基本的な部分というのが実は「後悔しないコツ」に当たりますので、よーく聞いてください。

多くの住宅会社が屋根葺きの際に当たり前のようにやっている間違った施工方法が二つあります。
①野地板(屋根板)に構造用合板を使用している
②下葺き材にアスファルトルーフィングを使用している

素人の方にはどこが間違っているかは分からないと思います。実は住宅会社さんでも理解していない所の方が圧倒的に多いのです。

まずは野地板に構造用合板を使用している件ですが、真夏の気温が30℃以上の場合に屋根材の表面温度は70℃を超えます。冬は秋田の場合、-5℃~-15℃まで下がります。瓦屋根の場合、瓦は屋根の下地材に直接触れる事は有りませんが、金属製屋根の場合は直に、しかもベッタリ触れます。つまり先程記載した温度が下地材に直接伝わるのです。構造用合板は7~9層の薄い板を接着剤で貼り合わせて出来た板です。構造用とは言え、悪く言えば生産方法はベニヤ板と同じです。夏と冬で気温差が80℃以上も違う環境が何十年も続くとやがて接着剤が劣化し、剥離してくるのです。これを防ぐには野地板に無垢の杉バラ板を張るのが一番効果的です。特段杉材に限定はしませんが、無垢のバラ板を使う事をお勧めします。そうすることで剥離の問題は解消され、耐久年数も大幅に伸びます。

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次に下葺きに使うアスファルトルーフィングですが、これを問題にしている住宅会社は①より稀だと思います。ただ構造用合板以上に屋根材の熱がダイレクトに伝わる部位ですので、より過酷な環境下にある訳です。私がここで問題視にしているのは下葺き材の主原料であるアスファルトです。アスファルトルーフィングは昔のアスファルトフェルトに比べれば遥かに耐久性は良くなりましたが、主材は変わっていません。アスファルトの最大の欠点は高熱による『油分の気化』です。つまり高温にさらされるとルーフィングからどんどん油分が抜けていき、やがてルーフィング材は紙状態となって防水性能が失われていくというリスクです。このリスクを避ける為、弊社ではファイバー製4層構造のルーフィング材を使用しております。この材料はアメリカ製で本国では40年保証がされている優れものです。国外である日本ではメーカー保証の対象にはなっていませんが、いずれこのような材料が日本でもスタンダードになってくると思います。

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