サッシ選びで後悔しないポイント
家づくりにおいてサッシ選びはとても重要なポイントです。特に寒冷地においては尚更です。例えば床、壁、天井の断熱性能がとても優れた部屋に一つだけ窓を付けた場合、部屋の熱が逃げる部位は窓である可能性がもっとも高いと言えます。付けた窓が性能の高いサッシだとしてもです。つまり窓が無い家ほど断熱性能が高い家になる訳です。ですが通常住宅において窓の無い家は存在しません。なぜなら窓の無い住宅は確認申請が下りないからです。住宅を建てる場合、各部屋毎に採光量の計算が求められます。トイレや浴室などは窓が無くても通りますが、居室の場合は大なり小なり窓が必要になります。窓を付ける事で断熱性能が落ちることが分かっていても、建築基準法上窓は必ず付けなくてはならないのです。
上記のことから窓が住宅内の熱損失の最大要因であるならば、サッシは高性能なモノを選ぶべきと考えるのは当然で多くの住宅会社は樹脂サッシを奨めてくるでしょう。確かに樹脂サッシの熱損失量は他のサッシに比べると少なく、ある意味ベストな選択と言えるかもしれません。
でも弊社では敢えて樹脂サッシは選びません。その理由は『樹脂サッシの耐久年数に疑問がある』からです。この『耐久年数に疑問がある』とはどういう事か不思議に思われる方も多いと思います。そこで下記の写真をご覧いただきたいと思います。
これは20数年前にリフォームを依頼されたお客様のお宅で撮った写真で、築27年を経過したサッシの状態です。小さくて分かりづらいかと思いますので解説させて戴きます。これは樹脂サッシのフレームの縦枠と横枠、そして開き窓の縦框と横框のジョイント部分が離れてしまい、4mm程の隙間が生じた写真です。樹脂サッシの特徴として部品と部品のジョイント部分が溶着による接合で製品が作られている事が挙げられます。この溶着とは高温で溶けた状態の時にそれぞれの部品を貼り合わせ、徐々に冷却しながら硬化させる接着方法です。
私はここの現場でこの樹脂サッシを見るまでは一度も樹脂サッシに疑念を持った事が無かったのですが、この日を境に考え方が大きく変わりました。確かに樹脂サッシほど断熱性能が高いサッシはありません。しかしながら「断熱性が高い」というだけで本当にこのサッシを選んで良いものでしょうか? 国は我々に100年持つ住宅を求めています。私もこの考えには賛成で、どうしたらそのような家づくりが出来るのか日々試行錯誤をしております。その中で窓というパーツはとても重要な存在なのです。前段で申し上げた通り、室内の熱が外に逃げないようにするには高性能なサッシが必要なのです。しかし、そのサッシの寿命が30年も持たないとすれば、意味が無いのです。
現代の樹脂サッシの寿命が何年になったかは分かりません。しかし出来上がったサッシを見れば作り方は昔とあまり変わっていないように見えます。溶着技術が進歩して耐久年数が長くなったかもしれませんが、だからといって私は耐久年数が2倍以上になったとは思えないのです。そういう考えを持ちながらも樹脂サッシに取って代わる新商品が無い状態が10年以上続きました。そして2018年にとうとう私が待ち望んでいた新しいサッシが登場しました。LIXIL製「サーモスX」と言う高性能ハイブリッドサッシです。
このサッシは外がアルミ製で内が樹脂製のサッシです。ここまで聞くと「それってただのアルプラサッシじゃないの?」と思われる方も多くいらっしゃるかと思いますが、構造が全く違います。参考までに一般的なアルプラサッシの写真もご覧ください。
いかがでしょうか?外目で見たら同じようなサッシですが、内部構造は全く別物です。実際に性能値にも大きな差が有り、サーモスXは樹脂サッシに近い性能値になっております。数字だけで見れば樹脂サッシより少しだけ劣りますが、体感的にはその違いは感じないほど優れています。そして何よりも私が強調したい事はこのサッシの耐久性なのです。外にアルミを使う事で耐久年数が大幅に伸びるのです。アルミ製のサッシは昭和の時代から使い続けられ60年以上経過したモノでも現役で使われており、その耐久性能は既に立証されております。多くの住宅会社は「断熱性能の高さ」だけを追い求め、それだけをお客様に伝えます。しかし前段で紹介した剥離現象がもし起こった場合の事まで考えている会社は数少ないと思います。要はサッシを選ぶ際には断熱性能ももちろんですが耐久性能も高いモノ、つまりトータルバランスで優れた製品を選ぶ事が後悔しないポイントとなるのです。